2012年4月14日土曜日

第5回カリキュラム 取材の実践(カメラ編)

今回のメニュー

1.カメラを使ってみよう

2.記事のなかの会話文

3.書き手のリテラシー

 

1.カメラを使ってみよう

<写真のバリエーションを増やす>

・どうやってカメラを操作するか。この問題は、家電量販店で販売されているカメラを手にした途端に、すべて解決される。

・問題は、どう写真を撮るか、どんな画角で撮るかの問題に移行している。


♦バリエーションの増やし方♦

 

①引きとアップ

⇒例えば:全体写真、ネクタイから首だけ写真、顔だけのアップ写真。これだけで、三種類のバリエーションになる。
*アクティブさ出したい場合は、写真のなかに「手」が入ると、アクティブさを表すことができる。

 

②人とモノ

⇒インタビューの写真を撮る時、表情・姿だけでなく、被取材者が所有しているモノや立っている場所がその人を語ることもある。
仕事の資料が人間を語ることもある
                   

③ヨコ位置とタテ位置

 ⇒カメラを横に構えるだけでなく、縦に構えてとる。印象がグッと変わる





ヨコ位置


タテ位置






*そもそも、なぜバリーションを増やす必要があるのか?

・記事としてまとめる際に、編集者が使える写真の選択肢を増やしてあげるためである。
・フリーでやる場合は、自分が編集者として選択できるものを用意しておくため。

♦写真がぐっとうまくなるちょっとした工夫♦

 

①目の高さから撮るのをやめる


1.しゃがんでで撮る

2.高いところから撮る

・実にシンプルだけれど、自分の目線から意識的にずらすことによって写真に変化をつける


フラッシュを消して撮ってみる 

 

ヨコ位置だけでなくタテ位置で撮ってみる

・イマイチな写真も、タテ位置にすることでよい写真になることがある。
・記事編集の段階でタテ位置写真が使われる傾向がある。


ズームではなく、自らもう一歩を身を乗り出して撮ってみる

・手動トリミング機能


⑤単調な写真だったら、思い切って斜めにして撮ってみる

・日本の新聞写真は「水平線は水平に、重力は垂直方向に」がルール。これでは、ダイナミックに欠ける。思いきって、カメラを動かしてみる


⑥あらゆるものを三脚として利用する

・究極の三脚は地面だ。
・車の上、ガードレールも三脚として使える。
・電柱もカメラを横で固定できる。
・目の前のあらゆるものが三脚に見えてくる


⑦タイマーを使ってみる

・タイマーは記念写真のために存在しているのではない。ブレをなくすために利用するもの


♦報道記者として大切な心がけ♦

目に映ったものは、片っ端から撮る。

 ・「目に付いたものは全部被写体であり、カメラのフィルムを惜しむな。」
→新聞社時代に先輩から教わったこと

 ・殺人事件の現場に落ちている落ち葉でさえも押さえておく。あとで決定的な証拠写真になるかも知れない。

・撮ったものはあとで削ることはできるが、撮ってないものはどうしようもないのだ。


2.記事のなかの会話文

<会話の再現性はどこまで高めるべきか>

・文中の「」で引用する場合はセンシティブにならないといけない。
・とくに会話上の主語を取り間違えてはいけない。
→被取材者のAさんの発言なのか、国の役人の考えをAさんが代弁した形になっているのか。
ここは、慎重に会話を再現していかなければいけない。
・バックアップとしてのICレコーダーが役に立つ
・会話文の挿入の仕方によっては、被取材者が自発的に話していないことこそがニュースであると示すことができる。とくに役人とのインタビューでは有効である。

例えば...

--××とはどういうことですか??
役人「○○○」

--××に関してどう考えていますか?
 役人「○○○」

このように、相手の会話文を文中に挿入するだけではなく、会話そのものを載せてしまうという手法も場合によっては有効である。被取材者が自発的に語っていないこと、会話のなかで新事実が発覚していくことの過程を示せる。

<引用文や会話文をどのくらい、記事のなかで使用したらよいのか>

・専門家のコメントを引用して結論を導くくらいだったら、そのコメントの正当性を証明するくらいの事実を取材で収集すべき。
・会話もあまりに多くなると、記者自身はなにを伝えたかったのが見えなくなる。
・けれど、初心者は「飛び石方式」で記事を書いていてもよい。

「セリフ」...地の文...「セリフ」...地の文...「セリフ」

*印象的なセリフとセリフをつないで、記事をまとめていく手法が「飛び石方式」。

・理想はすべて地の文で記述する。
・被取材者のセリフを一個も使っていないけれど、声を聞こえてくるかのような文書


3.書き手のリテラシー

<切れ味のスパッとした主張を書こうとすると、現実から離れてしまう>

・現実に起きていることは複雑である。
・ひとつの変数や、因果関係だけで現実を切り取るべきではない。
 
「観光地の景気が悪化してしまったのは、原発の風評被害のせいだ」

→ この主張は勢いはよいが、原発事故前から観光地が構造的不況に陥っていたという現実を無視してしまっている。観光地の経済が冷え込んだのは、原発事故という変数ひとつだけのせいではない。

・現実は複雑に要素が絡み合っている。そのことを無視してしまうと、現実から遠ざかった記事になってしまう。

・現実を素直に記述する。


(佐々木健太)


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